「教室通信」連載コラム:うたのはなし

 当教室では「教室通信」という新聞を毎月発行しています。掲載コラム「うたのはなし」を抜粋してご紹介します。

言葉の裏側

 かの文豪、夏目漱石は英語教師として教壇に立っていた際に、「I love you」を「我君を愛す」と訳した生徒に対し、「日本人はそんなことは言わない。“月が綺麗ですね”とでも訳しておきなさい。」と伝えた、という話があります。しかし、この発言の証拠となる文献はなく、今では作り話だとされていますが、高校生の頃に聞いたこのエピソードが、当時から大好きでした。「二人は、どこから月を見ていたんだろう?」、「相手はどんな言葉を返しただろう?」、「月ではなく、花や星だったら伝わり方は違うのかな?」。たった数文字から、無限に想像を広げてくれる『言葉』、また音楽の中で唯一言葉を扱う『歌』に魅了され、今に至ります。

 そしてつい先日、改めて言葉というものの面白さを、再認識した出来事がありました。別れをテーマにした歌詞について、「30代の恋に奥手な女性。数年ぶりにできた恋人が実は既婚者で、別れを決意した」と想像した私に対し、生徒のAさんが、「大学4年生の男の子。彼女がサークルの先輩を好きになり、突然振られちゃう」と、主人公の性別も、年齢も、別れの原因も全て真逆の解釈をしていて、お互いにビックリ!同じ歌詞を読んだはずなのに、そこから想像した景色が全く違ったのです。そうなると、言葉の発音の仕方や、そこから生まれる強弱、更にはブレスの位置など、私とAさんの歌い方は必然的に異なるはずですよね。これこそ、歌の面白さ!事実、Aさんが歌った「大学4年生の男子版」はオリジナルとはまた違った、むしろそれ以上の素晴らしい仕上がりで、「いやぁ、いい歌、生まれちゃいましたね!」と思わず唸ってしまいました、私(笑)。

 言葉というものを起点にして、表現は無限に広がります。誰かの解釈や考えを真似るのではなく、自分の頭と心をフル回転させた時にこそ生まれる、オンリーワンな歌。私自身もいつも追い求めていたいと思います。(宮本由季)

今さらダパンプ?!

 私ね、最近ハマってるんですよ・・・DA PUMPに!「どうせ“U・S・A!”きっかけで好きになったんでしょ〜!」という嘲笑を覚悟の上で、今回、あえて書かせて頂きたい!私が心掴まれた、あの夜のことを。

 DA PUMPは、97年のデビュー直後から、立て続けにヒット曲連発のスター街道を歩んでいましたが、メンバーの脱退などを機に、メディアから姿を消していきました。そこから紆余曲折を経て、今年(※2018年)20年ぶりに再ブレイクを果たしたことは、すでに大きな話題になっています。とはいえ、話題なのは曲であって「人間20年も経てば、声も衰えるだろう・・・。」と大いに高を括って、彼らが出演する歌番組を見ていた時のこと。当時のヒット曲のイントロが流れ、ボーカルのISSAが歌い始めて、5秒後。私、度肝を抜かれたんです。「20年前より、格段に歌が上手くなってる!」。低音から高音まで余裕たっぷりの艶々な声で歌い上げるその姿に、冗談じゃなく、その場で腰が抜けてしまったのです。その後、踊り、歌いまくりのメドレーも、程よい抑揚と共にサラッと歌い上げ、しかしよく見れば、マイクを持つ左手は驚くほど正確に口元に固定され、息切れ防止の為の鼻での腹式呼吸(これ、すごくキツイんです。)も余裕でこなす姿に、気づけばテレビの前で正座して観ている自分がいました。

 プロ歌手のボイストレーニング風景というのは、様々な理由から公にされることが少ないため、「歌が上手いのは生まれつき」だと思われがちですが、「上手いままでい続けること」は想像を絶する努力が必要です。声の衰えは、悲しいかな、全ての人に訪れる自然の摂理。そうなった時に「誤魔化す」のか「真っ向から抗う」のか。彼の歌声を聴きながら、プロとしての意地を目の当たりにし、番組が終わる時には、溢れる涙を拭いながら一人で拍手喝采!カッコいいを通り越して「ありがとう!」と叫ばずにはいられませんでした。あ〜、大変!もっと書きたいのに字数が足りない!今、私をチョンっと突っついたら、ぶわ〜っとDA PUMP熱が溢れ出ると思いますので、ご興味のある方はお気軽にどうぞ(笑)。(宮本由季)

名曲の聴きどころ〜なんてネガティブな歌い出し!

 今回から始まりました『名曲の聴きどころ』。歌は、ただ聞き流すだけではもったいない!歌詞、メロディには作者の想いや、ちょっとしたマジックが要所要所に隠されています。それを私の独断と偏見で、毎回1曲1ポイントに絞ってご紹介します。

 記念すべき第1曲目は、世代を超えた名曲!中島みゆきさんの「時代」です。聴きどころポイントはズバリ!『なんてネガティブな歌い出し!』。「時代」と言えば、最も有名なのは「まわるまわるよ 時代はまわる〜」というサビの歌詞ですよね。それ故、忘れられがちなのはイントロの歌詞。「今はこんなに悲しくて 涙も枯れ果てて もう二度と笑顔にはなれそうもないけど」。こんな台詞、もし友達に言われたら「一体何が起きたの?」と心底心配になります。

 しかもこのイントロのメロディには、この曲の最高音がすでに使われています。通常、最高音は、気持ちも、声量も最高潮!を迎えるサビに用いられることがほとんどです。しかし、この曲はサビが始まるよりももっと前、スタートのイントロからすでに最高音を使っています。実際に、オリジナルの音源を聴いてみても、中島みゆきさんは歌い出しから力強く、胸の内を訴えるような歌い方をしています。

 では、何故イントロに、“ネガティブな歌詞”そして“力強いメロディ”を配置したのか?私はこう考えます。実は、この後に出てくる歌詞、「そんな時代もあったねと いつか話せる日がくるわ」。これこそが最も伝えたい事なのでは?と。

 絶望の淵にいる人に対して、 まずはイントロで“わかるよ。今が一番辛い時だよね。”と想いを代弁するように、ネガティブな歌詞で歌い出す。そしてその後、“でもね、いつか笑って話せる時はくるんだよ”と優しく背中をさすってあげているように感じるのです。人間であれば老若男女関係なく訪れる辛い時を、この歌はただ“応援する”だけでなく、まず“共感してくれる”。だからこそ、世代を越えて多くの人に愛される曲になったのだと思います。(宮本由季)


抑揚をつけて歌ってみましょう!

 「カラオケで“君の歌は一本調子だね”と言われた・・・。」「あの人の歌は“抑揚”がついていて良いね。」

 歌が上手がどうか?を判断する時に使われる言葉として『抑揚』がありますが、それは具体的にどういうものなのでしょう?例えば人と話す時、私達は無意識に抑揚をつけています。「私の名前は宮本由季です。」という文章の場合。一番大切なのは「宮本由季」という名前の部分ですよね?よってその部分の音量が一番大きくなり、最後の「〜です。」は締めくくりなので、自然と音量は小さくなります。この音量のバランスが逆だと、とても不自然に聞こえます。また全て同じ音量だと、まるでロボットが話しているように感じるでしょう。

 歌の中でも同じことが言えます。歌では「歌詞」と「メロディー」という面から、部分的に音量を変えることで『抑揚』をつけることができます。

 「歌詞」という点では、まず“心を込めたい言葉”を探してみましょう。「あなた」「さようなら」「逢いたい」「ずっと」・・・。選ぶ言葉は歌う人の感性によって様々でしょう。大事にしたい言葉の音量を大きくしてみたり、反対にあえてささやくように歌ってみるのも、緊張感が増してとても効果的です。

 「メロディー」という点から考えると、音が段々と上昇していく場合には、音量を大きくしていきます。反対に音が下降していく形の場合、音量を徐々に小さくしていくことで自然な抑揚を表現できます。そして、『抑揚』をつける時に最も大事なことは“音量の変化は大胆に!”ということ。「自分ではやっているつもりだけど・・・。」と言っても、人間の耳は些細な音量の変化は聴き分けられません。「こんなにやっていいの?」というくらいで丁度いいものなのです。実際、私自身「それはやりすぎです!」と生徒さんに言ったことは、レッスンでは一度もありません。皆さん一人一人の感性から生みだされた『抑揚』は、きっと聴く人の心にも届くはずですよ☆(宮本由季)


選曲のポイントを解説します!

 「何を基準に、どんな事に注意して曲を選んだら良いのでしょうか?」これは、日々のレッスンの中で生徒さんからよく受ける質問です。今回は“レッスンで歌う歌”という点に絞って、選曲のポイントを挙げてみたいと思います。

 まず、選曲の際には「何を目標にするのか」を一番に考えてみましょう。「自分にとっての課題が含まれている曲」を選ぶのが最も大切なポイントだと思います。いくつか具体例を挙げてみましょう。

【音域を伸ばしたい】
 自分が現在出せる最高音を先生と一緒に確認した上で、それよりも“1つか2つ上の音”が出てくる曲を選んでみましょう。いきなり5つも6つも上の音を出そうとするのは、さすがに喉がオーバーヒートしてしまいます(涙)。

【表現力をつけたい】
 強弱がしっかりついている曲、具体的にはサビに向けての盛り上がりがはっきりしている曲が良いと思います。逆に、展開が単純で、全体的に淡々と進んでしまう曲はこの場合には不向きです。

【リズム感を身につけたい】
 少し早めのテンポの曲がオススメです。アップテンポの曲では、自分でリズムを理解して、体に覚えさせることで、リズム感を徐々に身につけていきます。

 その他、日頃から様々な年代・ジャンルの曲に触れておくというのも「いざ選曲!」となった時にとても役立ちます。私自身は学生時代によく聴いた90年代の曲はもちろんですが、80年代の歌謡曲、70年代のフォークソングも歌詞、メロディーの美しさがとても魅力的なので、自分への課題曲としてよく選びます。ドリカムも、ちあきなおみも、吉田拓郎も、細川たかしも、なんでもござれ!です。候補は多ければ多いほど良いという事です☆「自分一人で探すのは不安だなぁ。」という方は担当の講師にご相談ください!その際はぜひ「お任せで」ではなく、思い切り自分の好み、理想、悩みを伝えてみましょう。遠慮は無用です!こだわりを持って選んだ曲は、必ず皆さんの大切な十八番になるはずですよ☆(宮本由季)


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